「水割り、お湯割り、前割り」 移住で知った鹿児島の焼酎文化の話①
こんにちは。移住支援コーディネーターです。
鹿児島に移住して、はじめて見たもののひとつが、たいていの居酒屋さんに標準装備されている「お湯割り用のグラス」です。
グラスによってパターンはありますが、5:5とか6:4などの「このラインで作ると、いい感じになるよ!」という目安線が書いてあります。
鹿児島に移住してきたばかりの頃、お湯割りを頼まれた時に『このグラスがあるから大丈夫だろう』と、水割りと同じ手順でお湯割りを作ろうとしたら正しい作り方を地元の方が教えてくださったことがありました。
(そう、水割りとお湯割りの手順は違うのです)
また、飲み会や晩酌でも、最初はビールだけど、その後は最後まで焼酎、という方が多いですし、神社の御神酒も、鹿児島では焼酎で、文化として深く根付いていると感じます。
本当は現地にお越しいただいて、鹿児島の焼酎文化を体験していただければと思うのですが、時節柄、なかなか鹿児島に訪れるのが難しい状態が続いています。
ですので、せめてご自宅で鹿児島に触れる機会になればと思い、今回の記事を作成しています。
さて、今回のタイトルは「水割り、お湯割り、前割り」ですが、「前割り」は聞いたことがない、という方も多いのではないでしょうか。
今回の記事が、もっと鹿児島に親しみたい方や、より焼酎を楽しみたい方のご参考になれば幸いです。
というわけで。
焼酎のプロに聞いてみた。
東串良町へのUターン移住者で、十年あまり勤めた酒造会社で実際に焼酎をつくっていた経験をお持ちで、100年を超える歴史のある児玉酒店の三代目児玉憲介さんに詳しいお話をうかがいました。
(前回、児玉さんをご紹介した時の記事はこちらです)
割り方について
「まず最初に、焼酎づくりの話をしますと、できたばかりの焼酎(原酒)のアルコール度数が、38°くらいです。この原酒を製品にする段階で、加水をし25°に整える、という作業があります。
この加水の水は、軟水と呼ばれるカルシウムやマグネシウムの含有量が少ない、日本人が飲み慣れている飲みやすい水が使われています。ですので、水割りやお湯割りに使う水も、軟水、国産の水が相性が良いです。
わたしが焼酎の魅力だと思う『原料になる素材からのやわらかい旨味』を引き出しやすいので、おすすめしています。
焼酎と水(お湯)の比率は、ゴーゴー(5 : 5)、ロクヨン(6 : 4)が一般的だと思いますが、『この飲み方でないと本当の飲み方ではない』みたいなルールはありません。
自分の好みに合う比率を探しながら、楽しく焼酎を飲んでいただけたらと思います」
お湯割り、水割りのつくりかた
「まず、お湯割りは、
①グラスにお湯を注いでから
②焼酎を注ぎます。
こうすると、グラスの中で対流が起きますので、かき混ぜなくても大丈夫なんです。
生のままで飲むより、さらにやわらかい口当たりになります。
「次に、水割りは、
①グラスに氷を入れる
②焼酎を注ぐ
③水を入れる
です。この順で入れると、比重の関係で混ざりやすくなるので、頑張ってかき混ぜなくてもいいので、おすすめです」
なるほどー。
では、前割りは?
「はい。前割りは『前もって割っておく』焼酎です。
翌朝に炊くごはんを前日にセットしておくみたいに、焼酎を自分の好みの水加減で割って冷蔵庫に入れておきます。
こうしておくと、より口当たりが柔らかく、まろやかになるんです。
これもごはんみたいですが、土鍋で炊くごはんがおいしいように、前割りを入れておく容器も、陶器や、黒千代香をおすすめしています」
(続きます)
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いかがでしたでしょうか。
最初にご紹介したこのお湯割りグラス、実はよく見ると、最初に入れるお湯の線はあっても、次の焼酎をどこまで入れるか、の線は書かれていません。
グラスのふちにすりきり一杯まで入れる人もいれば、渡す途中にこぼれないようになんとなくこの辺りでという人もいて、お湯割りをつくる人それぞれのさじ加減で、味が微妙に変わります。
この「てげてげ(適当)」さが、おおらかな鹿児島の風土であるとともに、焼酎の文化のひとつなのだと思います。
外に出にくい、人に会いにくい、緊張しがちな日々が続いていますが、時には、心身を緩める時間も必要になります。
たとえば、お気に入りの本を読んだりしながら、焼酎をお供に、くつろいでみてはいかがでしょうか。